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うそつくのに慣れないで 4



 夕食は何か作ろうかというに嶋本が疲れているを気遣って外で食べようと言い出した。何度も来ているけれど元来方向音痴のは未だに嶋本の住む町の繁華街には慣れずにいる。  嶋本の腕に手を絡めてキョロキョロしながら歩いているときに伺うようにこちらを見ている彼らに気づいた。

「なぁ、あれ、知り合い?」
「あ?・・・あぁ、今年のひよこや」

 ものすごいものを見た、そんな顔の彼らを見て、見られた方よりも見た方がびびっている辺り力関係が如実に表れているのがおかしくては笑いをかみ殺した。

   嶋本に気づかれてしまえば、ひよこたちが知らん振りをすることなど出来るはずもなく、互いを押し合いながら嶋本の前にやってきて挨拶をした。

「初めまして」

 目の前で及び腰状態の彼らにはにっこりと笑いかけた。それを嶋本が忌々しげに見たのには気づいたけれど知らん振りした。

「お前らえらい体力ありあまっとるみたいやなぁ。またここで踊るか?あー?」
「そんなんご飯食べに来たくらいでいじめたらんときよ」
「オマエは口出すな」

 ぴしゃりと言い切られては一歩嶋本の後ろに下がった。はひよこたちを見ると肩をすくめて小さく舌を出し、人差し指で角の形を作ると嶋本に気付かれないように嶋本の頭に合わせた。それを見たひよこたちは少し表情をゆるませた。

「嶋本さんの彼女さんなんですか」

 無遠慮にずいぶんとクセのあるイントネーションで石井が口をひらいた。

「えっ、でも軍曹この間合コンでキスして・・・」

 天然なのかぽろりと余計なことを口に出してしまった神林は周りに押さえ込まれた。戦々恐々とした空気が嶋本を中心に渦巻く。一体どうなるかと慄くひよこたちをよそには呆れたように少し笑った。

「そうやの?」
「あー、ノリや、ゲームや」
「遊ぶんもほどほどにしてや?」
「わーっとるがな」

 修羅場になるかと思ったその場が和やかな会話になってひよこたちは驚いた。

「大人じゃー」
「いいなぁ」

 そのまま、じゃあと二人が去っていくのを羨望の眼差しでひよこたちは見送った。



200505??→20080607改

 

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